研究概要 |
1. 早発卵巣不全(POF)の背景因子の検討:40歳未満で高ゴナドトロピン(Gn)性卵巣機能低下症を呈した続発性無月経64例について、背景因子の検討により、手術・放射線で去勢された群(III群、31例)、卵巣手術・化学療法の既往のある群(II群、8例)、これら以外(I群、25例)の3群に分けられた。 2. 内分泌学的検討:血中FSH(LH)基礎値の平均はI、II、III群夫々99.9(39.3)、100.3(39.8)、92.0(33.1)mIU/mlと高値であった。血中インヒビン比較的高値例ではE(エストロゲン)/P(プロゲストーゲン)あるいはGnRHアゴニストによるGn分泌抑制療法の後にE産生の増加が認められ、卵胞存在の機能的指標としてインヒビン測定の有用性が明らかとなった。 3. 免疫学的検討:自己抗体はI、II群の夫々59.2、42.8%に認められた。I群では複数保有例が多く(31.3%)、44.8%に他の血清免疫学的検査異常も認めた。リンパ球サブセットではLeu19^+分画高値がI、II群で夫々30.4、16.6%、Leu3^+/Leu8^-分画異常が34.8、16.6%に認め、血清診断と併せて、免疫異常の存在、I・II群間の差異が明らかとなった。 4. 骨代謝・脂質代謝の検討:第2〜4腰椎の平均骨密度はI、II、III群で夫々0.864、0.997、0.857g/cm^2と低値であり、同年代平均骨量に対するSD値は、OSD以上がI、II、III群で夫々0、33.3、0%、-2SD以下は33,3、33.3、17.6%と特にI、II群において著明な骨量減少を認めた。T.Chol>220mg/dlは、I、II、III群で夫々20.8、42.8、43.7%、LDL-Chol>140mg/dlは20.0、33.3、35.7%と、3群ともに高脂血症を高頻度に認め、骨量の変化と伴に、生涯を考慮した治療が必須であると考えられた。 5. 治療成績:挙児希望例では、E/P周期的投与3周期後休薬する治療(リバウンド療法)によりI、II群で夫々25、80%症例が排卵に成功し、骨・脂質代謝に対しても好影響を認め、その有用性が明らかとなった。 E/P投与の際の血中Gn低下反応、休薬中の血中E増量反応による卵胞存在の推測の可能性も示唆された。
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