卵巣性排卵障害のひとつである早発卵巣不全(POF)は卵胞保持例もあり、性腺異形成などと区別して、治療の機会を失することのないよう注意する必要がある。本研究は、これまで、重篤な排卵障害であるために排卵誘発が無効と思われ、ややもすればホルモン補充療法のみ行われ、排卵誘発を試行されなかったPOF症例において卵胞の存在を予測することにより効率的に排卵誘発療法を行い、当該患者に朗報をもたらすことを主眼として進められた。26症例のPOFについて、エストロゲン/ブロゲストーゲン(E/P)周期投与を行い、投与中のFSH値、投与終了後のエストラジオール値をRIAにより、投与前のinhibin、α-β inhibin A値をELIZA法により測定した。その結果、以下のことが判明した。 1.E/P投与中の血中FSH値は卵胞存在群(排卵群)では有意に卵胞非存在群(無排卵群)より低値を示した(それぞれ平均、6.4mIU/ml、20.2mIU/ml)。 2.E/P投与後の血中エストラジオール値は卵胞存在群では有意に卵胞非存在群より高値を示した。 3.E/P投与前の血中inhibinおよびα-βinhibin A値は卵胞存在群では有意に卵胞非存在群より低値を示した(それぞれ平均、inhibin 1.19U/ml、0.29U/ml;α-βinhibin A 1.20U/ml、0.29U/ml)。 以上の結果により投与中のFSH値、投与終了後のエストラジオール値、投与前のinhibin、α-βinhibin A値によりPOF症例の卵胞存在の予測が可能となり、排卵誘発療法の個別化が効率的に行えるようになるものと期待される。また、周期的E/P療法はGnRHアゴニスト併用hMG療法と同等の排卵成功率が得られ、しかも骨代謝・脂質代謝に対する副効用、経済性の点からGnRHアゴニスト併用hMG療法より有用であると考えられた。
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