研究概要 |
子宮内膜症患者腹水中のmatrix metalloproteinase-9(MMP-9)とそのインヒビターであるtissue inhibitor of metalloproteinase-1(TIMP-1)ならびにTIMP-1の遺伝子発現に関与するinterleukin-10(IL-10)濃度をELISA法を用いて測定した.腹水中にはMMP-9は検出できないが,高濃度のTIMP-1およびIL-10が存在することが明らかとなった.子宮内膜症の存在する患者の腹水中IL-10濃度は,子宮内膜症のない患者に比して有意に高いことが判明した.IL-10およびIL-6が子宮内膜ならびに子宮内膜症細胞におけるTIMP-1遺伝子発現に及ぼす影響については定量化reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法を用いて検討中である. 子宮内膜症患者腹水中には高濃度のIL-6が存在することを明らかとしたが,IL-6は子宮内膜においても発現することが知られている.そこで,IL-6の子宮内膜ならびに子宮内膜症由来の間質細胞増殖に及ぼす影響について検討した.IL-6受容体とそのシグナル伝達を担うgp130の遺伝子発現をRT-PCRにて検討すると,増殖期と分泌期子宮内膜および子宮内膜症間質細胞すべてにおいてIL-6受容体とgp130の遺伝子発現が観察された.IL-6とIL-6の可溶性受容体の間質細胞増殖に及ぼす影響をMTT assayにより評価した.IL-6および可溶性受容体は,分泌期子宮内膜細胞の増殖を有意に抑制した.一方,増殖期内膜と子宮内膜症細胞では抑制はみられなかった.IL-6と可溶性受容体は子宮内膜の増殖制御に関与することが明らかとなった.子宮内膜症においてはその応答機構が異なることが示唆された.
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