研究概要 |
プロラクチン(PRL)分泌異常症の原因についてはlactotropic cellにおけるドーパミン受容体異常や細胞内情報伝達系の異常も原因の一つとして考えられている。PRL分泌異常症の分子生物学的解明を目的とし、まず、GH3細胞における細胞内情報伝達系の解明から着手した。 GH3細胞を用い,Thyrotropin-releasing hormone(TRH)刺激によるMitogen-(M phase-)activated protein kinase(MAP)キナーゼ活性化反応,及び生理的役割について検討した。ゲル内リン酸化法にてMAPキナーゼ活性反応はTRH刺激後5分後をピークに上昇し、MAPキナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤で100%,PKC阻害剤で80%,tyrosinキナーゼ阻害剤,細胞外Ca2_+非存在下でそれぞれ30%抑制された。cAMP単独でMAPキナーゼ活性化反応は有意に上昇しTRH刺激と相加効果を示した。TRHによるPRL分泌はMEK阻害剤で抑制されず,CaMキナーゼII及びMLCキナーゼの阻害剤で有意に抑制された。TRH刺激はDNA合成能を抑制し,形態変化をもたらしたが,これらの変化はMEK阻害剤で阻害された。TRH存在下で培養すると,細胞内PRL量は増加し,成長ホルモン(GH)量は減少したが,MEK阻害剤でPRL量の増加は抑制され,GH量の減少は抑制されなかった。 以上より,TRH刺激によMAPキナーゼの活性化反応は直接PRL分泌には関与せず,DNA合成の抑制,PRL産生量の増大と言った細胞分化に関与していることが示唆された。
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