研究概要 |
ドーパミンD2受容体作動薬であるブロモクリプチンは高プロラクチン血症や下垂体腫瘍の治療薬として広く使用されているが、下垂体腫瘍の中にはドーパミン抵抗性の腫瘍が存在する。今回我々は、ドーパミン抵抗機序解明の目的でD2受容体を介さないドーパミンの作用機序について検討し、あわせてp38 mitogen-activated protein kinase(p38 MAPキナーゼ)とp44/42MAPキナーゼとの関連も検討した。 ラット下垂体腫瘍細胞GH3細胞を用い,まず初めにブロモクリプチンによるp38MAPキナーゼ活性化反応とアポトージスの関連を検討した。GH3細胞をブロモクリプチン存在下に培養するとp38 MAPキナーゼ活性は上昇し、同時にTUNEL陽性のアポトージス細胞数が増加した。これらの変化はp38 MAPキナーゼ特異的阻害剤で有意に抑制された。ブロモクリプチン刺激p38MAPキナーゼ活性はD2受容体拮抗剤で阻害されなかった。p44/42MAPキナーゼ活性化因子(EGF・TRH)をブロモクリプチンと同時投与するとp38MAPキナーゼ活性は有意に減弱し、アポトージスが抑制された。これらの結果は、D2受容体を介さないブロモクリプチンによるアポトージス誘導機構にp38MAPキナーゼ活性化反応が関与する事、p44/42MAPキナーゼ活性化因子はp38MAPキナーゼ活性化反応の抑制を介してアポトージス誘導を阻害する事を示している。 以上よりドーパミン抵抗機序解明の為にはD2受容体を介する系と介さない系の両者を検討する必要がある事、p44/42 MAPキナーゼ活性化機構との関連も合わせて検討する必要がある事が明らかとなった。
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