完全型LHを認識するモノクローナル抗体を標識抗体としているSPAC-SLH試薬とLHポリクローナル抗体を標識抗体としているイムライズLH試薬を用いる二つの異なった測定方法でLH値か2倍以上の解離を示した14名の婦人と解離が認められなかった11名の婦人を対象としてPCR法により、LHの遺伝子解析を行った結果、解離の認められない症例はLHの構造異常が認められなかったが、解離を示した症例は全て第2エクソン内の2カ所に塩基の点変異(Thymine→Cytosine)とアミノ酸配列の変化(Trp8→Arg8、Ile15→Thr15)が認められたので、変異LHは遺伝子解析をするまでもなく二つの異なった免疫学的測定方法で容易にスクリーニング可能であることを発見した。このスクリーニング法を用いて臨床的に変異LHの存在頻度を不妊患者で検討すると、その存在頻度は不妊原因か黄体機能不全、遅発排卵、高プロラクチシ血症による患者では多い傾向がある事が判明した。その後、245名の生殖内分泌疾患で検討した結果、153名の正常婦人は8.5%の頻度であったが、生殖内分泌疾患患者では約2倍の頻度(18.4%)が認められ、排卵障害患者では約40%と高率であった。しかし、対象症例のうち不妊率は正常LHを有する婦人で43%であり、変異LHを有する婦人の51%と比較して統計的な有意差はなく、変異LHと不妊との関連性は認められなかった。故に、変異LHは排卵障害をもたらす特定の疾患(早発閉経、高プロラクチン血症、黄体機能不全)で高率に存在する事が示唆された。また、下垂体におけるLH-RH刺激に対するLHの分泌能を検討した結果、wild LHよりも変異LHの方が早期により多く分泌されており、下垂体の感受性は変異LHの分泌能の方が亢進していることが示唆され、この事はheterozygoteの排卵障害の病態解明の手がかりとなりうる。
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