まず、本実験の第一段階である酵素コラゲナーゼ・プロテアーゼを用いた妊娠ラット子宮平滑筋縦走筋層から細胞を単離する方法を確立した。高純度コラゲナーゼ・プロテアーゼ処理を2コース、高利力価コラゲナーゼ処理を3コース施行することにより組織深部より損傷の少ない細胞の単離が可能となった。これによりイオンチャンネル電流の記録がよりノイズの少ないものとなった。 単離した細胞に通常のパッチクランプ法(全細胞記録法)を応用したところ、比較的大きな外向きカリウム電流が得られた。細胞により徐々に立ち上がり30秒以上持続する比較的大きな電流と立ち上がりがきわめて速く50ミリ秒で減衰してしまう電流の二種類が記録された。これらの電流は減衰時定数と電位依存性により、遅延性矩形波電流(Delayed rectifier電流)と一過性外向き電流(A電流)であると分離同定された。従来の輪走筋層の細胞と比較すると縦走筋層の細胞ではA電流の比率が低く、約10%の細胞にしか存在しないかあるいは電流密度が非常に小さいことが判明した。 しかしながら膜電位制御を行っていると考えられる内向き整流カリウムチャンネル電流の分離同定は困難であった。そこで、通常のパッチクランプ法にかわり、現在はニスタチンを用いたPerforated Patch Clamp法を使い同電流の単離に着手している。同実験法は細胞内環境の維持が容易であることより、β刺激剤をはじめとする各種薬剤の効果を観察するのに適しており、またカリウム電流では報告もないため同時に検討を進めている。
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