子宮収縮は平滑筋細胞の膜電位の変化によりカルシュウム(Ca)が細胞内へ流入し起こる。そこで膜電位制御の主体と推察されるカリウム(K)チャンネルの電気生理学的特性について検討した。まず、酵素コラゲナーゼを用いて妊娠ラット子宮平滑筋層から細胞を単離する方法を確立し、単離した細胞にパッチクランプ法を応用し子宮平滑筋Kチャンネル電流の解析を行った。 全細胞記録により比較的大きな外向きK電流が得られた。30秒以上持続する電流と立ち上がりが速く50ミリ秒で減衰してしまう電流の2種類が記録された。これらの電流は減衰時定数と電位依存性により、遅延性矩形電流と一過性外向き電流であると考えられた。前者は20mMのテトラエチルアンモニウムにより阻害され、活動電位の再分極相を形成する電流と考えられた。遅延性矩形電流は2種類(IKrおよびIKs)が知られているが阻害剤であるE-4031とIndapamideに対する反応性より子宮で観察されるのはIKsであった。 一方、一過性外向き電流は2mMの4-アミノピリジンにより阻害されることより神経細胞で観察されるA電流と考えられ、活動電位の発生を抑制していることが推測された。単一チャンネル記録では細胞内のCa濃度に依存して開閉するCa activated K channelが記録された。単一コンダクタンスは約250pSと大きく、maxi-K channelとみなされた。細胞が収縮した後に開き、膜電位を過分極させ収縮を終息させると推測された。しかしながら今回の実験では内向き整流電流の分離同定は困難であった。 以上から少なくとも3種類のKチャンネルが相互に働き、膜電位を変化させ子宮収縮を制御していると考えられた。また、非選択性陽イオンチャンネルと思われる電流も記録され、別の膜電位制御機構あるいはCaチャンネル以外のCa流入機構の可能性が示唆された。
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