本研究では、卵胞閉鎖機構におけるアポトーシスの意義とその調節機構を検討する目的で、卵巣におけるInterleukin-1 β converting Enzyme(ICE)の存在およびin vivoでの性周期における変動、卵巣細胞培養系を用いて、卵巣培養細胞でのICEの時間的変化およびICEの産生を調節する因子について、ICEmRNAの発現量の変化を目安にして検討した。 1)ICEmRNAはラット卵巣に存在した。しかし、そのレベルはICEmRNAが最も多い脾臓の10%程度であった。 2)PMSG-hCG投与時、卵巣のICEmRNAはPMSG投与中は変動なっかたが、hCG投与後6時間目から急速に増加しはじめ、24時間目まで上昇が続き(ピークは投与前の152%)、48時間目にはもとのレベルまで減少した。 3)卵巣培養系での時間経過によるICEmRNAの動態では、培養開始後24時間目でICEmRNAのピークを認めた。 4)視床下部・下垂体ホルモンでは、GnRHがICEmRNAの発現を約140%、アンドロゲンが約160%、TNFαが約200%に増加させた。一方、デキサメサゾンはICEmRNAの発現を60%に減少させた。 以上より、Fasシステムによるアポトーシスの活性化の指標となるICEが卵巣に存在すること、またICEが排卵機構と密接に関係すること、さらに卵胞閉鎖に関与することが知られているGnRH、アンドロゲン、TNFαは、ICEmRNAの発現を増加させることにより、アポトーシスの活性さる可能性化が明らかとなり、ICEを介したアポトーシス機構が、卵胞閉鎖に関与する可能性が示唆された。
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