研究概要 |
ヒト卵巣癌におけるサイクリン依存性酵素2の活性制御機構に関する研究として、本年度は以下のような結果を得た。 1 前年度の成果を踏まえ卵巣癌の例数を増やして、パラフィン切片を作成し、これを用いてCdk2,cyclin D1,cyclin E,p27に対してそれぞれ特異的な抗体により免疫組織染色を行った。cyclin D1とp27は、良性腫瘍>境界型悪性腫瘍>悪性腫瘍の順で発現量が減少しており統計学的に有意であった。またCdk2及びcyclin Eに関しては、良性腫瘍<境界型悪性腫瘍<悪性腫瘍の順で発現量の増加が確認され、これも統計学的に有意であった。 2 新鮮なヒト卵巣癌を用い蛋白質を抽出し、Western blot解析によりCdk2,cyclin D1,cyclin E,p27の各組識中の量を定量的に解析した結果、免疫染色で得られた結果が明瞭に示された。 3 免疫沈降法で回収したCdk2の活性を測定したところ、この活性は悪性度の高いものほど高かった。 4 p27とcyclin D1の低発現およびcyclin EとCdk2の高発現が卵巣癌の悪性度と相関していることが明らかとなった。p27とcyclin D1を高発現しているものでは、比較的良い予後が認められた。p27とcyclin D1は卵巣癌の予後判定マーカーのしての実用性が期待できると判定された。 以上より、p27とcyclin D1は卵巣癌の悪性化との関連が深く、Cdk2活性が相対的に高くなる結果として進行が起こることが示された。
|