研究概要 |
103例のヒト卵巣癌の標品を用いて細胞周期関連蛋白質の発現と癌の悪性度や予後等の関連を系統的かつ網羅的に解析する試み行った。細胞周期関連蛋白質としては特にG1期ならびにG1-S変換期に関連するCDK2,CDK4,cyclin D1,cyclin E,p27,p16を選択した。それぞれに特異的な抗体により、免疫組織染色を行うと同時に、癌から抽出した蛋白質を用いてWestern blot解析を行った。さらにCDK2,CDK4についてはリン酸化酵素活性を測定した。その結果、以下のことが判明した。 1.cyclin D1とp27は、良性腫瘍>境界悪性腫瘍>悪性腫瘍の順で発現量が減少していた。特にp27については悪性度との逆相関が明らかに認められた。 2.CDK2及びcyclin Eに関しては、逆に良性腫瘍<境界悪性腫瘍<悪性腫瘍の順で発現量が増加していた。これは、癌細胞の異常増殖活性を反映しているものと考えられた。またCDK2リン酸化酵素活性は良性腫瘍<境界悪性腫瘍<悪性腫瘍の順で高かった。 3.p27は卵巣癌の悪性度の判定に有用であるとともに、予後判定にも有用であることが示唆された。卵巣癌の予後判定マーカーのしての実用性が期待できた。 4.CDK4とp16との間に逆相関があることが判明した。CDK4は、良性腫瘍<境界型悪性腫瘍<悪性腫瘍の順で発現量の増加が確認された。またp16に関しては,良性腫瘍<境界型悪性腫瘍<悪性腫瘍の順で発現量の減少が確認された。 5.p16のダウンレギュレーションはGrade 2,及びGrade 3においての方が、Grade 1やborderlineに比べて高頻度に起こっており、p16のダウンレギュレーションは卵巣癌の悪性化との関連が深いことが示された。 以上より、G1期ならびにG1-S変換期の細胞周期関連蛋白質の発現の解析により卵巣癌の悪性度や予後を判定することが可能であることが判明した。
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