研究概要 |
子宮頚癌の発生ならびに進展に関しては,種々の内因性癌遺伝子,抑制遺伝子,上皮増殖因子などが複雑に関与していことが示唆されており,その発生過程においてヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)感染が関与していることは多くの認めるところである。また最近,細胞の不死化と密接に関係するテロメレースが癌において活性化されていることが明らかにされている。 1) 細胞診正常の子宮頚部244例,軽度異形成27例,中等度異形成17例,高度異形成ならびに上皮内癌19例,浸潤癌30例よりサイトブラシにて摂取した細胞標本について,テロメレース活性をtelomerase repeat amplification protocol(TRAP)法によって測定した. テロメレース活性は正常6.6%,軽度異形成25.9%,中等度異形成35.3%,高度異形成ならびに上皮内癌68.%,浸潤癌96.7%に陽性であった.異形成は正常より,浸潤癌は異形成よりそれぞれ明らかに高値を示しており,異形成の中でも程度がひどくなるほど陽性率が高くなっている. 2) 異形成および浸潤癌から樹立されている培養細胞においてはすべてにおいてテロメレース活性の陽性化が認められた.正常細胞では陰性であったが,HPVウイルスによって不死化した細胞,煙草タールによって癌化させた細胞では陽性であった. 以上より,テロメレース活性の陽性化は頚癌で高率に起こっており,しかも,その多段階発癌機構のなかで,比較的早期のイベントと思われる.
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