研究概要 |
卵管機能に関わる因子を同定する予備研究として、私共はヒト卵管上皮の再生とアポトーシスについて免疫組織化学的に検討した。その結果、ヒト卵管上皮は2%以上の低頻度であるが性周期に無関係に増殖する。卵管上皮の細胞の中で、PCNA,Ki-67陽性細胞は分泌細胞にほぼ限定され、繊毛細胞にはPCNA,Ki-67陽性細胞は認められなかったことから、繊毛細胞はほとんど増殖していないことが示唆された。また、基底細胞であるCD4/8陽性細胞も性周期と無関係に増殖し、妊娠期にも活発に増殖していることがわかった。TUNEL法、透過型電子顕微鏡の結果より、この細胞は同時にアポトーシスを起こしている可能性が示唆された。CD34の染色により、妊娠期には血管密度が非妊娠時の3倍以上となり、血管新生が生じていることが示された。妊娠に関連して卵管の血流が増加していることが重要と考えられた。次にウサギ卵管留水腫モデルを作成し、卵管上皮が卵管結紮後数日で大規模に退縮し、その形態学的変化が極めて月経に類似することを示した。従来の報告よりかなり早期に卵管上皮は容易に傷害されることが証明され、卵管上皮が極めて脆弱であることを示した。この変化は卵管上皮の血管系の破錠を伴っており、卵管の血流が卵管上皮の維持に極めて重要であることが示唆された。私共は、卵管上皮の再生および、卵を確認し、免疫細胞に情報伝達を行うには、卵管上皮に発現するチロシンキナーゼが重要と考え、Degenerated Primerを設定し、チロシンキナーゼのプロフィール解析を試みた。マウスを用いて過排卵を誘導し、初期胚通過時の卵管において、mRNAを単離し、RT-PCRを行ったところ、210bpのバンドを得た。現在はこれらのクローニングを行っているところである。
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