研究概要 |
子宮内膜症患者における骨盤腹膜では,肉眼的に様々な病変がみられるが,病変による活動性に差がみられるのか,増殖態度が異なっているのかについては十分検討されていない.今回これら色素性病変における増殖能について検討した.対象は当科で腹腔鏡下に内膜症病変を生検した51例および正常子宮内膜22検体を対象とした.検体をホルマリン固定後,パラフィン切片を用い,免疫組織学的に検討した.増殖能の指標として,後PCNA抗体,Ki-67抗体による免疫組織染色を行うとともに,AgNORsによる特殊染色をおこなった. その結果,PCNAは子宮内膜腺上皮および間質細胞の核内に強陽性となり,子宮内膜の月経周期による変動は増殖期に強く発現し,分泌期には低下していた.定型的内膜症ではPCNAは腺上皮の核内および間質細胞の核内に強陽性であったが,非定型的内膜症病変における発現は弱かった.また,内膜症病変における色素別の変化をみると,赤色>黒色>白色病変の順となったが,月経周期による変動は認めなかった.Ki-67は子宮内膜腺上皮と間質細胞に陽性細胞が散見される程度であり,PCNAに比べ陽性細胞数は少なく,内膜症病巣では染色態度も弱く,色素別の変化は認めなかった.AgNORs染色では,子宮内膜腺上皮における陽性細胞は分泌期に比べ,増殖期にやや強い発現を示したが,推計学的な有意差は認めず,内膜症病巣における色素別の発現率にも差を認めなかった. 内膜症の色素別の増殖能を比較したところ,PCNAを指標とした場合には,赤色病変がもっとも増殖能が高く,活動性も強いことが推察されたが,Ki-67およびAgNORs染色では明らかな違いを見いだせ得なかった.今後は,内膜症の消退に関する検討を,アポトーシスの面から検討する予定である.
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