研究概要 |
子宮内膜症患者における骨盤腹膜病変では,1998年アメリカ不妊学会の分類により赤色,白色および黒色病変に細分類することが提唱されたが,それぞれの病変による違いが活動性に関与するのか,内膜症の自然史に関与するかは明らかではなかった.私どもは,骨盤腹膜病変の生検材料を用いて増殖因子の1つであるPCNA(proliferative cell nuclear antigen)による免疫組織染色,および血管新生因子であるVEGF(vascular endothelial growth factor)を検討した結果,内膜症患者腹水中のVEGF濃度は非内膜症患者に比べ,有意に高値であり,周期別では分泌期に比べ増殖期に高いことを報告した.さらに血管新生因子として微小血管の内皮に染色されるendoglinによる免疫組織染色を行った結果,endoglinによる染色は赤色>黒色>白色病変の順であり,以前報告したPCNAの結果と同様な傾向が認められた. その後,HGF(Hepatocyte Growth Factor)とそのレセプターであるc-Metに注目し,同様に腹水中のHGF濃度を測定し,さらにc-Metなどの免疫染色を加えた.その結果,HGFは内膜腺上皮と間質に発現しており,内膜症患者の正所性子宮内膜では,非内膜症患者の正所性子宮内膜より強い発現がみられ,骨盤内膜症病変では白色や黒色病変に比べ,赤色病変が有意に強い発現がみられた. したがって,子宮内膜症の活動性をみるためには,我々の行ってきた免疫組織染色が有用であり,現在世界中で幅広く用いられているr-AFS分類に活動性の指標となるような項目を加えた新たな分類を作成する必要があると思われた.
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