研究概要 |
【1】 進行子宮頚癌に対するConcurrent radiochemotherapyの局所治療効果に関する検討 [目的]巨大進行子宮頚癌に対する治療としてNeoadjuvant chemotherapy (NAC)+照射を行ってきたが,その成績は満足のいくものではなく,また,放射耐性の獲得などの問題点も指摘されるようになってきた.今回,1997年より新たに試みてきたConcurrent radiochemotherapy (CRC)の治療成績について,その局所制御を中心に,NAC+照射のそれと比較検討した.[方法]1)対象:巨大頚部扁平上皮癌.CRC群:14例(II期2例,III期9例,IV期3例),NAC群:45例(II期4例,III期36例,IV期5例).腫瘍の最大径の平均は6.1cm,6.5cm.2)治療方法:CRC群は化学療法(CDDP20mg/m2静注・5日間,または,120mg/m2動注)と同時に照射を開始し,旁大動脈リンパ節腫大例には拡大照射野で照射を行った.NAC群は化学療法(CDDP120mg/m2動注)の3週間後より照射を開始した.3)内診所見,組織診,MRIにより治療効果を評価した.[成績]1)照射終了時の局所制御率:CRC群100%,NAC群89%(p>0.05).2)局所再発率:CRC群14%(平均観察期間8ヶ月),NAC群44%(平均観察期間47ヶ月)(p<0.05).3)副作用:CRC群でGrade3以上の白血球減少が50%,血小板減少が29%に認められ,5例で照射の休止を必要とした(3例は拡大照射野で照射).休止期間は1〜9日,平均3.7日であった.[結論]CRC群では局所再発率はNAC群と比較して有意に低率であった.骨髄抑制は強い傾向にあったが、照射に及ぼす影響は少ないものと判断された. 【2】 子宮頚癌放射線治療症例におけるHPV DNA検出の意義:治療効果との相関に関する解析 [目的]子宮頚癌放射線治療症例の治療前・中・後におけるHPV DNA検出と治療効果との相関を検討する.[方法]平成7.1から平成10.3に当科で放射線治療(以下,放治)を施行し,かつ放治前に頚部原発巣のHPV DNAが陽性で,治療中,治療後もHPV検索を行いえた54例(I期7例,II期20例,III期20例,IV期7例)を対象とした.全例,治療中,後には組織検査を施行し治療効果を評価した.HPVの検査方法:(1)原発巣の擦過細胞をPBS緩衝液に保存.(2)細胞よりDNAを抽出し,L1 consensus primerを用いたPCR(50サイクル)を行った後,電気泳動法にてHPV DNAを確認.(3)HPV各型に特異的なprimerを用いて型判定 (16,18,31,33,35,58,X:others)を行った.[成績](1)対象54例において,で放治中にHPV DNAが陰性となったものは23例(A群),放治中には陽性持続し治療後6ヶ月以内に陰性となったものは13例(B群),治療中,治療後を通じて陽性のままであったものは18例(C群)であった.(2)治療終了時の組織検査について,A群,B群では全例に,そしてC群では18例中16例までにviableな癌細胞は認められなかった.(3)局所再発は,A群には1例もなく,B群では1例のみであったのに対し,C群では18例中11例であり,C群はA群,B群と比較して有意に高い再発率であった(p<0.01).
|