着床期子宮内膜組織における受精卵受容能の定量法開発に関する基礎的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10671566
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 梅咲 直彦 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (20106339)
• 研究分担者: 荻田 幸雄 大阪市立大学, 医学部, 教授 (00047086) ; 深山 雅人 大阪市立大学, 医学部, 助手 (50305629) ; 田中 哲二 大阪市立大学, 医学部, 講師 (80275255)
• キーワード: 着床 / 脱落膜 / 子宮内膜

研究概要

1) 脱落膜化現象の定量表現法の確立と脱落膜進行期分類の確立:本研究は当初は樹立したモノクローナル抗体を組み合わせての定量評価法の確立を目指していたが、我々は抗体を用いずに脱落膜化現象を定量表現できる簡易測定法の樹立に成功した(論文投稿中)ので、現在はこの測定系を用いても様々な解析を行っている。これは脱落膜化の代表的な生化学的マーカーであるプロラクチン分泌量を酵素免疫測定法で測定すると同時に、細胞数の変動も正確に測定できる。測定に必要な細胞数は数千個と非常に少なくて済み、一度に多数の検体が処理可能となった。この測定法の確立により、各種生理活性物質の脱落膜化誘導能の比較、サイトカインやホルモンのような各種生理活性物質による脱落膜化過程への修飾能、細胞外基質との細胞接着が脱落膜化に及ぼす影響などが容易に定量比較できるようになった。例えば、この実験系を用いて脱落膜化に及ぼす15種類以上のサイトカインの影響を一度に検討することに成功している。しかも、既知分子ではあるが、プロラクチン以外の脱落膜化の指標として、2種類の生理活性物質の同定にも成功した。現在はこれらの脱落膜化マーカーの制御機構についても解析を加えている。
2) 脱落膜化現象に伴い発現が大きく増減する抗原に対するモノクローナル抗体の作製:脱落膜化細胞または非脱落膜細胞で免疫したマウスからハイブリドーマを樹立し、抗体スクリーニングは約半数を終了した。その結果、数個の分化特異的に発現量が増減するハイブリドーマが選別されたが、多くは既知分子に対する抗体もしくは発現量の変動が少ないために臨床的応用の困難な抗体であった。ただし3クローンは子宮内膜間質細胞を2群以上の亜群に分別しうる抗体であることが判明し、目下、抗原の同定を試みている。再度細胞融合を行い、ハイブリドーマを別のスクリーニング法で選別する計画である。

研究成果

• [文献書誌] Tanaka T,Umesaki N,Ogita S: "Lower antigenecity of long-term In-Vitro cultured eutopic endometrial stromal cells from endometriotic patients:a possible evidence of genctic disorders in endometriosis." Osaka City Medical Journal. 44. 97-104 (1998)
• [文献書誌] Tanaka T,Umesaki N,et al.: "Enhancement of apoptotic susceptibility by interleukin-1 in human endometrial epithelial cells." Gynecol.Endocrinol.12. 315-319 (1998)
• [文献書誌] Tanaka T,Mizuno K,Umesaki N,et al.: "Suppressed apoptotic susceptibility in human endometrial epithelial cells pretreated with hepatocyte growth factor." Clinical and Experimental Obstetrics & Gynecology.25. 125-128 (1998)
• [文献書誌] Mizuno K,Tanaka T,Umesaki N,et al.: "Establishment and characterization of In Vitro decidualization in normal human endometrial stromal cells." Osaka City Medical Journal.44. 105-115 (1998)
• [文献書誌] Tanaka T,Mizuno K,Umesaki N,et al.: "Regulation of human endometrial stromal differentiation by IL-1β" Jpn Fertility Implantation. 16. 164-167 (1999)
• [文献書誌] Tanaka T,Umesaki N,: "Danazol effects on human endometrial cells in vitro" Clinical and Experimental Obstetrics & Gynecology.26 印刷中. (1999)
• [文献書誌] Tanaka T,Mizuno K,et al.: "Enhanced Fas/CD95-mediated apoptosis by epidermal growth factor in human endometrial epithelial cells." European Journal of Obstetrics & Gynecology Reproductive Biology.印刷中. (1999)
• [文献書誌] Mizuno K,Tanaka T,Umesaki N,et al.: "Inhibition of cAMP-mediated decidualization in Human endometrial stromal cells by laminin and IL-1β and laminin." Horm.Metab.Res.印刷中. (1999)