研究概要 |
第6染色体長腕q27領域(6q27)は上皮性卵巣癌で欠失(LOH)が高頻度にみられ,この領域にt(6;11)(q27;q23)に関与するAF-6遺伝子が存在することが判明した。AF-6遺伝子は6q27の約110kbの領域に存在し,28個のエクソンから構成される。GLGF/DHRドメイン,Ras-interactingドメインを有し,それぞれエクソン21-24,エクソン2-5に相当することが判明した。6q27LOH(AF-6遺伝子異常)は漿液性癌に高頻度にみられ,粘液性癌では概して低率である。一方,Ras遺伝子の異常は粘液性癌で高率とされている。現在漿液性癌と粘液性癌の臨床例を対象に,6q27LOH(AF-6遺伝子異常)とK-rasの異常の関係を検討しているが,両者のtumorigenesisにK-ras-AF-6genesを介する遺伝子異常の関与が濃厚であるとの結果を得つつある。 I期卵巣癌,57例を対象にモノクロナール抗体D07を用いたp53の免疫組織化学的検討により,31例(54%)にp53の過剰発現が観察された。31例の高発現例を対象にリンパ節のp53染色を施行したところ,かなりの症例でp53陽性細胞(微小転移?)が認められた。そこで,各症例毎に10個のリンパ節を対象とし,p53陽性細胞の数を算出し,10個以上の陽性細胞がみられたものと,それ以下の症例に分けて予後を検討したところ,5年生存率は前者が27%,後者が93%となり,前者が有意に予後不良であった(p<0.01)。すなわちリンパ節微小転陽性例の予後が不良であるという結果であった。これらのp53陽性細胞を実体顕微鏡下で,microresectionし,p53の変異の検討を試みたが,極く少量のDNAしか得られずPCRによる増幅は不可能であった。p53の変異を特定するには至らなかったが,リンパ節におけるp53の過剰発現細胞(微小転移?)は癌の予後因子となることが示唆された。
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