研究概要 |
6q27領域にはAF-6遺伝子を含め新しい4個の遺伝子が同定され,さらにAF-6にはRas-interactingドメインがあることが判明した。従来の我々の研究から,卵巣癌においては6q27LOHは漿液性癌で高頻度(53%)を示すが,粘液性癌では低率(23%)であり,逆にK-rasの変異は粘液性癌で高率(50%)であることより,両腫瘍の発生は異なると考えられてきた。しかしながら,K-rasとAF-6蛋白はRasシグナル伝達系でリンクしていると考えられ,両者の遺伝子学的発生機序には大きな差はないと考えられた。 癌の発生・進展には癌遺伝子,癌抑制遺伝子に加え,最近では修復遺伝子の異常の関与が注目されている。修復遺伝子の異常の表現型としてのreplication error(RER)を卵巣癌を対象に検討したところ,上皮性卵巣癌の25%にRERが認められた。組織型では粘液性癌で頻度が高く(38%),性索間質腫瘍である顆粒膜細胞腫でも高頻度(58%)であることが判明した。またRER陽性腫瘍では他の遺伝子異常が高頻度にみられることも確認され,修復遺伝子の異常は,遺伝子異常の蓄積に関与することが示唆された。 完全手術が成されたI,II期(pT1or2,No)上皮性卵巣癌58例を対象にp53の免疫染色を施行したところ,31例(53%)に,p53の過剰発現が認められた。この31例について所属リンパ節のp53染色を行ったところ,19例(61%)にp53陽性細胞が検出された(微小転移陽性)。微小転移陽性群は陰性群に比べ,有意に予後不良であった(p<0.05)。p53蛋白発現を指標としたリンパ節微小転移の検索は患者の予後を推定するのに有用と考えられた。
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