研究概要 |
双胎妊娠では単胎妊娠に比し,母児生命を危険に曝す重篤な合併症であるHELLP症候群を高率に合併する可能性が高い。なぜなら,HELLP症候群は妊娠中毒症合併婦人に高率に認められるからである。この仮説が正しいか否かを検討するため前方視的研究を計画し実行した。計6施設で登録された双胎妊婦119例においてプロスペクティブに血中アンチトロンビンIII(ATIII)活性,血小板数,GOT,GPT,LDH活性を測定した。妊娠30週以後,ATIII活性ならびに血小板数は漸減した。これら減少が激しかった婦人の割合は週数依存性に増加した。またこれら減少が激しいと肝機能異常と溶血を合併しやすいことが示された。4例(3.4%)はHELLP症候群の初期状態の血液検査結果を示した。これらのことは多胎妊娠ではHELLP症候群を合併しやすいこと,HELLP症候群発症に先行して血小板数やATIII活性が減少することを意味している。多胎妊婦を管理するうえで血小板数ならびにATIII活性のモニターはHELLP症候群ハイリスク妊婦の同定を可能にし,重症HELLP症候群発症を未然に防止するのに有用である。
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