研究概要 |
双胎妊娠では単胎妊娠に比し,HELLP症候群になりやすい。私どものこれまでの研究により,HELLP症候群発症に先行して血小板数/アンチトロンビンIII活性が徐々に減少することが明らかとなった。これらの値があるレベル以下となると肝機能障害,溶血が起こり始める。したがって,双胎妊娠では単胎妊娠に比して妊娠中,血小板数/アンチトロンビンIII活性が減少しやすいことが想像される。この点についての検討を行った。56名の双胎妊婦と692名の単胎妊婦について妊娠28〜30週と妊娠33〜40週に2回,血小板数/アンチトロンビンIII活性を測定した。また一部の妊婦についてはthrombin-antithrombin III complex(TAT),and plasmin-alpha 2 plasmin inhibitor complex(PIC)も同時に測定した。双胎妊娠では単胎妊娠に比して血小板数/アンチトロンビンIII活性ともに減少しやすいことが明らかとなり仮説が証明された。また,アンチトロンビンIII活性とTATは有意の負の相関を示すことから,双胎妊娠でアンチトロンビンIII活性が減少しやすいのはトロンビン産生が双胎妊娠では亢進しているためであることが示唆された。これらの知見は双胎妊娠管理上,重要なものである。また,何故双胎妊娠ではHELLP症候群になりやすいかを説明するものである。
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