研究概要 |
HELLP症候群発症に先行して血小板数/アンチトロンビンIII活性が徐々に減少するという仮説が正しいか否かの検討を行った。単胎妊婦637名,双胎妊婦237名を前方視的に観察し以下の結果をえた。単胎妊娠では約3%の妊婦が妊娠中毒症が存在しなくとも徐々に血小板数減少を示しそれら妊婦は血小板数減少を示さない妊婦に比し,7倍以上肝機能障害を示しやすい。双胎妊娠では単胎妊娠に比し血小板数減少/アンチトロンビンIII活性を示しやすく単胎妊娠と同様にこれらを示した妊婦はそうでない妊婦に比して肝機能異常を示しやすい。これら妊婦に示す肝機能異常はHELLP症候群に認められるものと同様であった。双胎妊娠では単胎妊娠に比し,トロンビン生成が亢進していた。これらのことは以下のことを意味した。血小板数/アンチトロンビンIII活性をモニターすることによりHELLP症候群の発症を予知可能である。双胎妊娠では単胎妊娠に比しHELLP症候群になりやすい。それは単胎妊娠に比して血小板数/アンチトロンビンIII活性が減少しやすいからである。何故双胎妊娠でアンチトロンビンIII活性が減少しやすいかはトロンビン生成が亢進しているためである。これらの観察はHELLP症候群軽症例の早期発見を可能にするため極めて臨床的意義が大きい。
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