研究概要 |
HIV感染妊婦における胎児,新生児に対する垂直感染の予防は重要な課題である.産道感染は陣痛発来あるいは破水前の帝王切開をにより予防可能であるが,妊娠中に成立する経胎盤感染は有効な予防手段がない.我々は複数のHIV感染妊婦胎盤におけるHIV RNAの局在を検討し胎盤、脱落膜にその局在を認めたが卵膜、臍帯は陰性であった。また胎盤を構成するvillous trophoblast,extravillous trophoblast,Hofbauer細胞を表面抗原で分画して検討したところ、CD4陽性のHofbauer細胞のみならず陰性のtrophoblastにも感染していることを証明した。絨毛細胞はCD4を有しないためalternative pathwayとして注目されるchemokine receptorの役割を検討した。その結果 胎盤絨毛におけるCCR5,CXCR4等のchomokine receptorの発現を明らかにした。脱落膜に存在する母体免疫細胞は異物である胎児の生着を許すために、胎盤抗原を認識して活性化し種々のサイトカインを介して絨毛細胞の増殖を促進するが拒絶応答は抑制される.その機序として脱落膜局所における免疫系の機能が注目される。我々はヒト妊婦において脱落膜局所でのTh2優位、脱落膜において胸腺外分化するT細胞の存在と脱落膜におけるTCRVβ,Vγレセプター遺伝子使用頻度の著しい偏りと免疫調節作用を明らかにし、また これら脱落膜に存在免疫細胞がMCP-1,MIP-1a,RANTESなどのchemokineを構成的に産生し胎盤絨毛細胞の増殖やhCG分泌等の機能を調節していることを明らかにした.しかし一方ではchomokine receptorが絨毛細胞におけるCD4非依存性のHIV感染に関与することが推察され現在その機構を検討している.
|