研究概要 |
子宮平滑筋腫は間葉系組織より発生する良性腫瘍であり、産婦人科領域において頻度の高い疾患である。しかしその発生原因については、不明な点が多い。最近になって,子宮平滑筋腫において高頻度の染色体転座が起こっていることが報告された。また、近年、様々な間葉系良性腫瘍において、第12番染色体長腕(12q14-15)上に存在するHMGI-C(High Mobility Group Protein I-C)遺伝子に関わる再構成・融合異常が生じていることが報告された。我々は,12q14-q15領域に存在するHMGI-C遺伝子が染色体転座によって切断されることにより,新たな融合遺伝子が生じ,それによって子宮平滑筋腫が発生すると考えられることを見出し,子宮平滑筋腫13症例中6例(43%)において染色体転座を確認した。本年度は、子宮平滑筋腫poly(A)RNAを用いて、HMGI-C遺伝子と新規遺伝子間との遺伝子融合を同定した。手術により摘出した子宮平滑筋腫症例よりmRNAを抽出し、逆転写酵素よりcDNAを合成した。このcDNAをtemplateととして3'-RACEを行い、ゲル電気泳動後HMGI-C遺伝子特異的プローブを用いてハイブリダイゼーションし、対応するDNAを抽出した。続いてシークエンスを行い、ホモロジー検索を行って調べた結果、新規融合遺伝子を同定した。HMGI-C遺伝子のExon3の下流に融合した遺伝子はホモロジー検索の結果、第8番染色体長腕(8q22-23)上に存在するcytochrome C oxidase subunit VIc(COSVIc)遺伝子であることが明らかになった。今回、子宮平滑筋腫において、HMGI-C遺伝子に関わる遺伝子の融合異常を見いだした。詳細な解析により、子宮平滑筋腫の分子病態の解明が期待される。
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