研究概要 |
1.マウス内耳におけるNa,K-ATPase,Na-K-Cl cotransporter、conexin 31およびconnexin 26の分布について免疫組織化学的手法を用いて解析を行なった。Na,K-ATPaseおよびNa-K-Cl cotransporterは血管条辺縁細胞、ラセン靭帯type II fibrocyteおよびsuprastrial zoneのfibrocyteにおいて強い活性がみられた。またconnexn 26はラセン靭帯fibrocyte間、血管条基底細胞に沿った領域に密に分布していたconnexin 31はラセン靭帯fibrocyte間のgap junctionに広く分布することが明らかとなった。 2.マウス蝸牛の生後発生過程におけるNa,K-ATPaseおよびconnexin 26の発現様式についても検討した。ラセン靭帯fibrocyteにおけるNa,K-ATPaseおよびconnexin 26の発現様式は、内リンパ電位の形成過程に極めてよく一致していた。 3.Brain-4のノックアウトマウスにおいて内リンパ電位の著明な低下がみられることを見い出した。この動物においてラセン靭帯fibrocyteの障害とgap junction蛋白の発現の低下が内リンパ電位の低下をもたらしているものと考えられた。 4.長鎖アルコールを外リンパに投与し、同時に内リンパ電位の変化を測定したところ、内リンパ電位の明確な低下が観察された。 以上の結果により、ラセン靭帯fibrocyteおよびこれらのfibrocyteを連結するgap junction networkが、内リンパ電位形成において必要不可欠の要素であることが実証された。
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