ラット聴覚野の同定と領域分けを、組織学的に試みた。ラット聴覚野は、大脳後部、側頭葉にあたる部位にあり、完全に脳の表面に露出していることが特徴である。結果、隣接する体性感覚野、視覚野などと近い位置にある。ニッスル染色(Ni)、パルブアルブミン免疫染色(PV)、カルビンデイン免疫染色(Cd)、アセチルコリンエステラーゼ染色(AchE)、サイトクロームオキシダーゼ染色(CO)を行って比較した。結果として、パルブアルブミン、カルビンデイン、アセチルコリンエステラーゼ、サイトクロームオキシダーゼでのいずれでも、聴覚野と思われる部位は染色された。パルブアルブミンと、カルビンデインで染色される部位はほぼ一致するが、アセチルコリンエステラーゼ、サイトクロームオキシダーゼで染め出される部位は、それよりやや狭く、他の種との比較から、一次野に相当する部位ではないかと推定される。カルビンデインで染め出される部位は、濃淡の差は認めにくいが、パルプアルブミン染色では、中央がやや濃く、周囲に向かって、淡くなっていく、グラデイエーションが認められた。他の感覚野との距離が近いため、複数の染色を用いた方が確実な同定、領域分けができることが推定された。少なくとも5つの領域に分けられることが推定された。電気生理学的には、潜時が10msec、30msec、70msec、100msec付近に発火がみられ、周辺部はやや中央部より潜時が長い傾向がみられた。MLR、SVRの起源の一部をなしていることが推定された。
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