研究概要 |
目的:メニエール病内リンパ嚢は,一般に発育が小さく,線維化が強く,白色を呈している.これは,メニエール病内リンパ嚢の機能不全を示唆する所見であり,この機能不全が内リンパ液の吸収障害を来たし,メニエール病に特有の内リンパ水腫を形成することが予想される.内リンパ嚢の機能不全をもたらす原因の一つとして幼児期のウイルス感染が内リンパ嚢発育障害を来すものと推測し,ヒト内リンパ嚢における単純ヘルペスウイルス,帯状疱疹ウイルス,E-Bウイルス,サイトメガロウイルスの検索を行っている. 対象と方法:対象としてはメニエール病内リンパ嚢手術時に採取できたメニエール病内リンパ嚢組織(n=6)と剖検例内リンパ嚢組織(n=2)であり,内リンパ嚢切片を用いin situ hybridization法にて上記4種類のウイルスを検索している. 結果:現在までにメニエール病内リンパ嚢6例中での陽性所見は,帯状疱疹ウイルスが5例(83%),E-Bウイルスが3例(50%),サイトメガロウイルスが1例(17%),単純ヘルペスが0例(0%)である. 考察:これらの結果から見ると,帯状疱疹ウイルスおよびE-Bウイルスの陽性率が高く,幼児期に感染したこれらのウイルスが内リンパ嚢発育障害を来たし,内リンパ嚢機能不全をもたらしている有力な証拠であることが予想される.但し剖検例内リンパ嚢2例中でも帯状疱疹ウイルス,E-Bウイルスで弱い陽性所見を示すものもある.コントロールである剖検例内リンパ嚢の例数を増やし,さらに陽性細胞の数をカウントする方法で有意差が有るかを検討する.
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