現在2例の両側高度難聴児を対象に研究を実施中である。第1例は1才11カ月の女児で、1歳2ヶ月時に細菌性髄膜炎から内耳炎に罹患し、以後難聴となった症例である。2例目は2歳の女児で、先天性の難聴である。現在症例1はTransonic、症例2は39OPLのそれぞれ補聴器を装用して聴能・言語訓練ならびに検査を実施中である。対象児に対する検査には通常の純音聴力検査(遊戯聴力検査)、言語検査のほかに研究分担者である益田の開発したビデオを用いた言語評価法を用いている。現時点での補聴器を装用した状態での音に対する反応および言語発達状況は、症例1についてはperilingualの失聴で、いったん獲得していた言語・構音の崩壊が徐々にではあるが認められつつある。症例2はprelingualの難聴児であるが、音声言語力については1歳前のレベルであるが、身振りによる表出は良好で、内言語は1歳半から2歳レベルと思われる。両症例とも補聴器による言語発達には限界があり、人工内耳埋込術の適応症例であると判断している。特に症例1は内耳炎により蝸牛の骨化の兆候がみられているため2歳ごろに手術予定としている。 対象児2例とも、現在人工内耳埋込術は未施行であり、本研究の目的である人工内耳装用下での検査はできていない。このため、報告すべきまとまった結果は得ていない。現在、補聴器装用下でのデータを集積中であるが、継続して研究を行う予定である。
|