研究分担者 |
山下 安彦 徳島大学, 医学部付属病院, 助手 (50304530)
伊井 邦雄 日本脳研究所, 副所長(研究職) (50035507)
大恵 眉美 徳島大学, 薬学部, 教務員
柴田 瑩 徳島大学, 薬学部, 助教授 (40035556)
山下 伸典 兵庫教育大学, 自然系, 教授 (50028180)
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研究概要 |
Hydroxyapatiteと同様に再建手術の分野で広く使用されている人工材科alumina ceramicsで作製された人工耳小骨のBioceram(Al_2O_3)を生体内に埋め込み,まず基礎的データを得るため,Bioceramの小円板(直径4mm,厚さ1mm)に対するラット皮下組織反応を光学顕微鏡下に定量的に長期間の観察を行った。われわれの先行研究で同様な方法を用いて行ったhydroxyapatite:Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2(Apaceram)の小円板をラット皮下組織に埋込んだ結果(J.Laryngol:1995,1997)との比較検討も行った。Bioceramの小円板をラット96匹の肩甲骨間部の皮下に埋め込み,1日後から20ヵ月までの間,経時的に皮下組織とともに摘出し,ホルマリン液に固定後,Bioceramを取り出したあとの組織について,厚さ6μmのH&E染色標本を作成し,Bioceram周辺の細胞とその分布を観察集計し,以下の知見を得た (1)14日以内では炎症反応は急速に減少した。(2)埋め込み30日〜6ヵ月後では大食細胞(2.8%±0.7%)とリンパ球(2.7%±0.9%)は低値へと漸次減少した。(3)6ヵ月後の観察では,これらの細胞は,さらに徐々に減少し,16ヵ月以降20ヵ月では0%となった。(4)経過とともに繊維芽細胞は徐々に減少し,線維細胞は徐々に増加した。(5)Apaceramを使用した実験結果では大食細胞とリンパ球では14日以内についてはBioceramと類似の組織反応がみられたが,30日と90日後において両者は消失した。しかし,180日後には大食細胞の軽度な再出現が観察されたことにより,埋め込み後180日から300日間ではApaceramの組織反応はBioceramに比べ相対的に不安定であることが示唆された。その理由は同じ人材材料でもbioactiveなApaceramとbioinertなBioceramとの材質の相違が反映しているものと考えられた。 以上の結果より長期の細胞反応という観点からみれば,Bioceramは再建手術の材料として耳科学領域のみならず関係各領域においても有用であることを示した。
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