(1)末梢神経の内膜は神経内に通液路を形成する。家兎を用いて、顔面神経の内膜も通液路を形成し、聴神経や三叉神経など他の脳神経と交通することを明らかにした。Hunt症候群などの際の病変の波及経路となりうることが示唆される。 (2)脳神経の内膜の通液路は脳神経節まで交通がみられるが、その中枢側の神経根や脳とは交通がみられない。神経内膜の通液路より中枢神経系への物質の移行に対して関門機構が存在し、その部位は神経がクモ膜や硬膜を貫通する部位であることが明らかとなった。 (3)神経傷害後に生じる神経浮腫のメカニズムを明らかにすることは、治療法の向上に寄与すると考えられるため、家兎の顔面神経を障害後、神経線維の変性と血管透過性の変化を観察した。その結果、神経変性と共に血管の透過性が末梢側に向かって亢進したことより、変性部位における血管透過性の亢進が浮腫の成因と考えられた。 (4)顔面神経麻痺に対して神経減荷術を行う場合、神経鞘の切開により浮腫を生じ、神経内の減圧効果があると一般に考えられている。そこで、家兎の正常顔面神経の神経鞘を切開したところ、同様に浮腫を生じ、浮腫部では血管の透過性が亢進し、さらに、一過性の顔面神経麻痺が認められた。神経鞘を切開すると、神経を覆う神経周膜の関門機構が破綻し、血管の透過性が亢進することにより、神経浮腫を生じ、顔面神経麻痺が生じると考えられた。従って、神経減荷術の際の神経鞘の切開は行うべきではないと考えられる。
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