アレルギー性鼻炎患者における鼻粘膜ヒスタミン過敏性亢進を解明する目的で、ラット三叉神経節細胞および鼻粘膜を用いて、ヒスタミンH1受容体のメッセージ発現に及ぼす好酸球の主要ケミカルメディエーターであるPAF及びTXA2の影響をin situハイブリダイゼーション法にて検討した。 鼻粘膜感覚神経の1次ニューロンである三叉神経節細胞は、好酸球のケミカルメディエーターであるPAFの刺激により、ヒスタミンH1受容体のメッセージ発現を増強させることが判明した。このPAFによるH1受容体のメッセージ発現増強は、lyso-PAFでは引き起こさないこと、またPAFの受容体拮抗剤であるWEB2086の前処置によりメッセージ発現増強が濃度依存的に抑制されることから、三叉神経節細胞のPAF受容体を介した特異的な作用であることが示唆された。一方、TXA2によるヒスタミンH1受容体のメッセージ発現は、コントロールと差を認めなかった。また、鼻粘膜では、鼻腺においてPAFによるH1受容体のメッセージ発現を確認したが、TXA2ではH1受容体のメッセージは誘導できなかった。これらPAFによる三叉神経節細胞および鼻腺におけるH1受容体のメッセージ発現増強はいずれも10^<-10>Mという極めて低濃度で発現しており、生体内での現象を反映していると考えられた。次に、三叉神経節細胞でH1受容体の発現が蛋白レベルで増強しているかをレセプターバインディングアッセイにて検討したが、発現量が微量で定量は困難であった。以上より、好酸球は三叉神経及び鼻腺のヒスタミンH1受容体の発現を増強し、鼻粘膜ヒスタミン過敏性亢進に関与している可能性が示唆された。今後は、H1受容体に対する抗体を用いその局在の確認が必要である。
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