アレルギー性鼻炎患者における鼻粘膜ヒスタミン過敏性亢進を解明する目的で、ラット三叉神経節細胞および鼻粘膜を用いて、ヒスタミンH1受容体のメッセージ発現に及ぼす炎症細胞由来ケミカルメディエーター-PAF、TXA2、LTC4-の影響をin situハイブリダイゼーション法にて検討した。 まずはじめに、鼻粘膜感覚神経の1次ニューロンである三叉神経節細胞は、PAFの刺激によりヒスタミンH1受容体のメッセージ発現を増強させることが判明した。このPAFによるH1受容体のメッセージ発現増強は、lyso-PAFでは起こらないこと、PAFの受容体拮抗剤であるWEB2086の前処置によりメッセージ発現増強が濃度依存的に抑制されることから、三叉神経節細胞のPAF受容体を介した特異的な作用であることが示唆された。また、PAFによるH1受容体のメッセージ発現増強効果は、PAFによる30分間の刺激後器官培養をはじめて1〜8時間後に引き起こされ、24時間後には消失した。発現ピークは4時間後であり、約70%の神経細胞にH1受容体の発現が認められた。しかも、この効果はPAF10^<-9>〜10^<-12>Mという極めて低濃度で発現しており、生体内での現象を反映している可能性が示唆された。一方、LTC4およびTXA2では三叉神経節細胞のヒスタミンH1受容体のメッセージ発現は認めなかった。 次に、鼻粘膜では、鼻腺においてPAFによるH1受容体のメッセージ発現を確認したが、LTC4およびTXA2ではH1受容体のメッセージは誘導できなかった。 以上より、PAFは三叉神経及び鼻腺のヒスタミンH1受容体の発現を増強し、鼻粘膜ヒスタミン過敏性亢進に関与している可能性が示唆された。
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