研究概要 |
我々は以前の研究で、癌特異抗原MAGE-3が頭頸部扁平上皮癌の約半数の症例で発現することを見いだしたが、今回はそのMAGE-3抗原由来のペプチドがワクチンなどの特異的免疫療法の手段となる可能性があるのかを調べた。日本人を対象とするので、日本人に最も多い抗原提示分子であるHLA-A24に結合する9merのペプチドをMAGE-3抗原上に5個同定し、それぞれについて細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導能をまず、健康人の末梢血単核細胞を用いて調べた。その結果、HLA-A24分子に高親和性に結合するペプチドM3-p97(TFPDLESEF)と低親和性に結合するペプチドM3-p120(EFLWGPRAL)でそれぞれペプチド特異的CTLが誘導できた。しかしながらMAGE-3抗原、HLA-A24分子を共に発現する頭頸部癌細胞を傷害したのはペプチドM3-p97特異的CTLのみであった。このようにペプチドM3-p97を刺激源とした場合に癌細胞を傷害するCTLが誘導できることが確認できたので、次にMAGE-3抗原とHLA-24分子を発現する頭頸部癌の担癌患者5名の末梢血単核細胞を用いて、ペプチドM3-p97特異的CTLの誘導を試みた。しかしながら、いずれの患者に於いても頭頸部癌細胞を傷害するCTLは誘導できず、癌患者にはこの抗原に対して免疫寛容が成立しているとが示唆された。現在、頭頸部癌細胞に発現される他の癌抗原ペプチド(SART-1,-2,-3抗原由来)についても、癌患者の末梢血単核細胞を用いて、これらのペプチド特異的CTLの誘導を試みている。
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