頭頸部進行癌の予後は悪く、従来の集学的治療法にも限界がある。頭頸部進行癌患者の細胞性免疫能は低下し、この免疫能破綻も進行癌の予後悪化因子の一つである。今までに、この領域の進行癌に免疫療法が有効あることが判明している。そこで細胞性免疫カスケードのKeyとなるサイトカインIL-2に着目し、IL-2遺伝子療法の可能性を追求した。 Helpes Simlex Virus(HSV)をベクターとしてヒトIL-2遺伝子を頭頸部癌細胞の一つであるKB細胞にトランスフェクションし(KB/IL-2細胞)のin vitro、また移植したヌードマウスのin vivoでIL-2遺伝子発現、IL-2産生を確認した。KB/IL-2細胞移植ヌードマウスの脾臓細胞のYAC-1、KB細胞に対する抗腫瘍性は、無処理マウス、KB細胞を移植したマウスからの脾臓細胞と比較して増強していた。KB/IL-2細胞移植ヌードマウスの血清中にはINF-γが誘導されており、このKB/IL-2細胞移植ヌードマウスの亢進した細胞障害活性はこのIFN-γとIL-2遺伝子からのIL-2によって主にNK細胞によって担われていることが判明した。中和実験として抗Asialo-GM1抗体処理、抗IL-2抗体処理を行うとこの抗腫瘍性は抑制された。つぎに放射線照射した(20Gy)KB/IL-2細胞を用いて造腫瘍実験また生存率を検討し、明らかにKB/IL-2細胞が移植されたマウスでは腫瘍増殖が抑制され、さらに生存率が延長していた。またKB/IL-2細胞を移植した腫瘍周辺にはAsialo-GM1陽性細胞が集積していた。さらに外因性のIL-12投与と相乗作用的に抗腫瘍効果を認めた。
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