研究概要 |
習慣性扁桃炎の病態における扁桃リンパ球のcostimulatory signalの発現 前年度の研究で習慣性扁桃炎に罹患した扁桃リンパ球は扁桃炎の既往のない扁桃リンパ球に比較して、Bリンパ球上のCD80,CD86の発現が有意(p<0.05)に低下していることを明らかにした。今年度はその機序につき検討を加えた。 症例及び方法 1)ヒト口蓋扁桃(習慣性扁桃炎症例と扁桃肥大や睡眠時無呼吸症候群などの非炎症性扁桃症例)から比重遠沈法、磁気ビーズ法(MACS)にてBリンパ球、Tリンパ球に分離し、Bリンパ球単独、Tリンパ球との混合でSEB(staphylococal enterotoxin B)さらにRSウイルス(respiratory syncytial virus)を加え、3日間培養し、FITC-CD80あるいはCD86抗体とPE-CD19抗体で二重染色し、フローサイトメトリー(FACStar)でBリンパ球上のCD80,CD86の発現を解析した。 2)培養上清中のサイトカイン(IFN-γ,IL-2,4,5,10)をELISAにて測定した。 成績 1)Bリンパ球上のCD80,CD86の発現にはTリンパ球の存在が必要であった。 2)培養上清中のIL-10は習慣性扁桃炎の方が非炎症性扁桃より有意(p<0.05)に高値であった。他のサイトカインには特に差を認めなかった。 考察 習慣性扁桃炎ではBリンパ球上のcostimulatory signalの発現が低下し、その機序としてIL-10による抑制作用が関与していることが示唆された。習慣性扁桃炎の病態としてcostimulatory signalの発現を介したT-Bリンパ球間の相互作用の低下によってウイルスをはじめとする外来抗原に対する免疫応答が低下している状態であることが推察された。
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