研究概要 |
双極子追跡法は時間分解能,空間分解能に優れ,また非侵襲的に脳機能を評価することが可能である。この特性を生かし,音刺激に対する中枢聴覚路の電気生理学的反応動態を双極子を指標として検討した。 各種の聴性誘発反応のうち聴覚皮質と最も深い頭頂部緩反応は50〜300msecの潜伏時間を有し、立ち上がりの緩やかな音刺激によっても明瞭に記録が可能である。従って、周波数特異性を有する音刺激により誘発される。周波数特異性を有する反応である。音の強弱のみならず周波数を変化させならが4種類〜8種類の刺激音を用いて得られた本反応の双極子を検討し、その起源を推定した。周波数変化により双極子は低周波数から高周波数へ刺激音を変化させると共に側頭回外側から内側、そしてやや前方寄りへと双極子が移動した.これまでに行われた観血的な実験等の報告に見られる聴皮質の周波数受容配列と同様な結果が非侵襲的な方法である双極子追跡法でも得ることが可能であった. また、語音刺激を用いて検討を加えた。双極子は刺激側に関係なく左右どちらか一側の側頭回近傍に位置する例が多かった。語音に対する認知についての研究への応用発展の可能性もあると思われた。中枢聴覚路の可塑性に関する研究への応用が可能であると考えられる。
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