1)内耳自己免疫病の発症機序解明の糸口として、モデルに近交系マウス、抗原に牛膜迷路を用いて実験的自己免疫迷路炎モデルを開発した。初回感作実験では、感作後7〜12日目に一過性のCD4陽性リンパ球を含む炎症細胞浸潤が蝸牛、前庭、内リンパ嚢にのみ、全例に発生した。対照群は無反応であった。追加感作実験では牛内耳成分と反応する数種の血清抗体を全例検出した。血清は牛内耳抗原66kD分子に反応したが、マウスの脳、腎、肝、肺由来蛋白の66kD分子、牛血清アルブミン、ヒト熱ショック蛋白70には反応しなかった。追加感作マウスの内耳組織に限りIgG局在を認めた。主たるIgG局在部位は血管条血管、骨迷路血管、蝸牛軸血管であった。今年度の研究で、牛内耳由来抗原の感作によってマウスに100%再現性のある細胞性免疫傷害型自己免疫迷路炎および液性免疫傷害型自己免疫迷路炎が誘導できた。これらの結果は内耳由来組織成分に種交差性で臓器特異的な抗原性蛋白の含有を示唆した。2)モルモット内リンパ嚢局所にKLH抗原によるIII型免疫反応を惹起させた結果、対側耳での一過性内リンパ水腫を形成した。さらに長期観察群血清に牛内耳成分66kD分子に反応する抗体を対照群を除く全例に認めた。この結果は内耳免疫傷害で暴露された内耳特定抗原に対する免疫反応の誘導を示唆した。
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