自己免疫傷害性内耳疾患の発症機序解明の目的で、実験的自己免疫性迷路炎の動物モデルを開発してきた。平成10-11年度の研究期間において、細胞性免疫が介在する自己免疫性迷路炎モデルを報告した。即ち、近交系マウスにサイクロフォスファマイドを感作2日前に腹腔注射し、牛内耳膜迷路抗原をフロイント完全アジュバントに混ぜ、1回感作する。感作4日目からリンパ球様細胞の浸潤が内耳、特に内リンパ嚢を中心として始まり、1週以後、蝸牛、前庭の外リンパ腔、内リンパ腔領域にも拡大し、12日以後徐々に消退する自己免疫性細胞性内耳免疫反応が誘導された。本年度は感作リンパ球による受動免疫の可能性をまず検討した。感作リンパ球5×10^7個の移入後、2〜7日に内耳へのリンパ球浸潤を認めたことから、この反応はTリンパ球介在性自己免疫性迷路炎と推察された。さらにこの浸潤リンパ球の性状を免疫組織化学的に検討した結果、CD4陽性、IFN-γ陽性、IL-2陽性であるTh1リンパ球がこの反応の介在リンパ球であることが示唆された。一方、抗体介在性自己免疫性迷路炎モデル動物も内耳抗原の複数回感作により誘導可能であった。感作動物の血管条血管や骨迷路小血管に免疫グロブリンIgGの沈着が見られ、さらに45、66、200KD内耳抗原分子に反応する血清内耳抗体の産生が同定された。これらの結果は、自己免疫性迷路炎の初期ではT細胞介在性で、慢性期には抗体介在性が優性となる病態の変化が推察された。
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