研究概要 |
当科に嗅覚障害を主訴に来院した33名に対してニオイ刺激誘発反応検査を行った。症例は13歳から81歳まで,男性11名,女性22名であった。嗅覚障害の原因は頭部外傷が13例(40%)と最も多く,副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの鼻疾患が8例(24%),その他上気道炎などがあった。T&Tオルファクトメータによる基準嗅覚検査と静脈性嗅覚検査を行ったところ嗅覚脱失症例が20例,嗅覚低下例が13例であった。これら33例に対して行った誘発反応検査の結果は,26例が無反応であったが,残りの7例から誘発反応が記録された。7例全員が女性で、頭部打撲が5例、肥厚性鼻炎と上気道炎がそれぞれ1例であった。嗅覚障害者から記録された誘発反応は全例とも潜時300-400msecの1つの陽性波であり、これは正常者で記録された二峰性の陽性波の前の波にほぼ一致していた。その経時的なトポグラフィーを観察すると,潜時約400msec付近に認められる頭皮上中心部から後頭部にかけて高電位領域は,正常者のトポグラフィーとほぼ同様のパターンを示していた。ことから同じ起源の誘発反応であろうと推測された。この反応は嗅覚の脱失した症例でも記録されたことからニオイ刺激による誘発反応であってもいわゆる嗅覚の反応ではなく,三叉神経の化学受容器が刺激された反応の可能性を示唆している。一方2番目の波は嗅覚障害者からは記録されず,嗅神経を介した電位であろうと考えた。
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