研究概要 |
掌蹠膿疱症(PPP)は病変部皮膚への好中球浸潤が特徴とされる疾患である。現在までその病因は不明であるが、病変部の病理組織像が乾癬のそれと似ていることから、乾癬との関連性が疑われている。乾癬はHLA-Cw6およびDR7との関連や、TNFA遺伝子との関連性がすでに報告されている。PPPにおいてもHLA-B、-DRとの関連が報告されるに至った。これは両遺伝子が連鎖していることによると解釈されているが、さらにこれらと連鎖している近隣の遺伝子が一次的に相関している可能性も考えられる。以上の事実から好中球遊走因子であるTNF-αがPPPの発症に関与している可能性が示唆され、今回検討を行った。 対象はPPP患者49名および正常人コントロール44名である。末梢血よりDNAを抽出し、HLA-DR9,TNFA/-308,TNF/N∞IのタイピングをPCR-RFLP法にて行った(Niizeki et al.,Cabrera et al.)。TNFについてはN∞Iで切断されるallele,TNFBについてはN∞Iで切断されないalleleとし、それぞれその逆のalleleをallele2とした。 HLA-DR9については、PPPとの関連性は確認できなかった。TNFA遺伝子多型性では、日本人に非常に希なallele2ではPPP群で6.1%に対しコントロール群4.5%であり、有意差は認められなかった。TNFB遺伝子多型性では、allele2の頻度はPPP群の方がコントロール群より有意に多く認められた(p<0.005)。またHLA-DR9陽性者におけるTNFB2の頻度では,PPP群においては、DR9+およびDR9一群間で有意差が認められた(P<0.005)。これに対しコントロール群では有意差は認められなかった。以上の結果よりPPPにおいては、TNFB2が関連しており、またコントロールと比較してDR9-TNFB2というハブロタイプの頻度が多いことが示唆された。PPPと一次的に相関を示す遺伝子がHLAであるかTNFであるかは現在のところ不明であるが、今後さらに周辺の遺伝子多型を検索する必要性があると考えられた。
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