研究概要 |
掌蹠膿疱(PPP)は手掌、足蹠に無菌性膿疱を繰り返し発症する炎症性皮膚疾患である。病変部の皮膚では好中球浸潤が特徴的であることから、好中球遊走因子であるTNFに注目し、本症とTNF遺伝子との関連について検討した。その結果、平成10年度にTNFB遺伝子NcoI(TNFB/NcoI)多型と本症が関連していることを報告した。しかしTNFB/NcoIが遺伝子として機能している部位とは考えにくいことから、近隣に存在すると考えられるPPP責任遺伝子との連鎖が観察されたものと考えた。そのため今回は、TNFB遺伝子に隣接するTNFA遺伝子プロモーター領域の多型について、塩基配列決定法にて検索した。この領域の多型は、TNF蛋白の産生量を調節しており、その個体差により疾患感受性が存在すると考えられたからである。対象はPPP患者80名である。末梢血よりDNAを抽出後、PCR法にてTNFAプロモーター領域-1107から-66位を増幅し、塩基配列を自動塩基配列決定機にて決定し、多型を検出した。TNFA遺伝子プロモーター領域の多型はすでに報告されているTNFA/-1031,TNFA/-862,TNFA/-856,TNFA/-307,TNFA/-237の5つの多型部位について検索した。(Higuchi et al., Tissue Antigens 1998 ; 51 ; 605-612)その結果、本疾患に特異的な多型がなく、また正常コントロール群と比較して、有意に頻度が高い多型も見いだすことができなかった。このことよりPPPとTNFA遺伝子との関係性がないことが明らかとなった。従ってTNFB遺伝子よりも染色体上テロメア側の領域にPPP関連遺伝子の存在が示唆された。今後はPPPにおける臨床的パラメーターの設定と多型診断による病因的に診断ができるかどうかについてさらに検討する予定である。
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