重粒子線は高linear energy transfer線の一つで、そのためX-線と比較して生物に対する影響を示す指標であるRBE(relative biological effect)が高いという生物学的な効果を持ち、従来の放射線治療では治せなかった放射線抵抗性の悪性新生物にも有効な治療と考えられている。 一方、いくらその物理学的な特性で線量分布が優れていても、眼球周囲の腫瘍や、眼内の腫瘍に対して照射を行う場合に、正常眼組織も同時に照射野に入ってしまうことは避けることのできないことであり、重粒子線の正常眼組織に対する影響を知ることは臨床応用に向けて急務と考えられる。そのため以下の実験を現在行っている最中である。 8週令のウイスターラットに対して、カーボンイオンによる重粒子線を4Gy、16Gyの一回照射を行い、コントロール群と比較を行った。個体数は4Gy群30匹、16Gyの群22匹である。麻酔下にてアクリル板にラットを固定し、タングステンによる遮蔽板により、右眼のみに、重粒子線が照射されるようにした。16Gy照射の群では、照射後2週目より、眼瞼の皮膚のびらんがみられ、また、角膜の混濁がほとんどの症例で認められた。4Gy照射の群に関しては、皮膚・角膜には変化は認められない。水晶体、網膜、視神経に対する影響については、現在、経過観察中のため、報告することはできない。また、長期的な影響についても現在検討中である。
|