研究概要 |
悪性眼内腫瘍や眼窩腫瘍への重粒子線応用を行うことを目的とし、その適正な線量の決定のため、正常眼組織に対する影響を検討した。今回の研究においては、正常Wisterラット(8週令、体重約150g)に重粒子線を照射し、検眼鏡的にまた網膜電図によりその影響を検討した。重粒子線の照射はカーボンイオンを用い、290MeV/uで加速を行った。照射線量は1,2,4,8,16Gyを1回照射とした。照射後1,3,6ヶ月後に、水晶体に関しては検眼鏡的にMarrianらの程度分類にしたがってスコアー化した、ただし成熟白内障はスコアー5として検討し、網膜電図においてはそのa-波・b-波の振幅を、同年齢のラットと比較検討した。白内障に関しては、照射後1ヶ月ですでに8,16Gy照射群では対照と比較して有意に白内障の程度が高くなっており、照射後6ヶ月では4Gy照射群でも対照と比較して有意に白内障の程度が高かった。網膜に関しては網膜電図のa-,b-波の振幅を比較すると、照射1ヶ月ではどの群とも対照と比較して有意差はみられなかった。3ヶ月では16Gy照射群のb-波の振幅が対照と比較して有意に低下してた。6ヶ月では8、16Gy照射群にてb-波の振幅の低下がみられたが、a-波に関しては対照と差はみられなかった。 上記の結果より、従来のX線照射の報告と比較すると、カーボンイオン照射において、水晶体への影響はX線の2〜3倍で、網膜への影響はX線の4倍程度と推察された。また網膜に関しては主に網膜内層が傷害されているものであり、網膜血管の血流障害による変化が主であると考えられた。
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