研究概要 |
中心性漿液性網脈絡膜症における脈絡膜循環障害の本態が脈絡膜静脈閉塞であり,さらにこれが急性反応性蛋白で血栓傾向を亢進させるプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1の上昇によりもたらされるという仮説を検証する目的で,本症患者を3施設で集積し,フルオレセイン螢光造影検査およびインドシアニン螢光造影検査を行うとともに,ELISA法によるプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1値の測定を経時的に行った.インドシアニングリーン螢光造影検査所見では造影早期の脈絡膜血管拡張と後期相における脈絡膜の充血像がみられた.本症患者17例の急性期に得られたプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1の測定値は25-439ng/mlで中央値は87ng/ml,年齢マッチした12例の正常コントローの7-84ng/ml;中央値:36ng/mlに比べて明らかに上昇していた(P=.0013,Mann-Whitney U-test).これまでの結果から,本症の急性期においては血漿中プラスミノーゲンアクチベータインヒビター1値は上昇しており,これは本症において血栓傾向にあることを窺わせる所見である. インドシアニングリーン螢光造影検査で認められる脈絡膜血流うっ滞の事実と合わせ考え,本症が脈絡膜静脈閉塞により惹起されるとする我々の仮説を支持する.現在上昇したプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1値の経時変化を観察中であるが,傾向としてはプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1高値は持続する傾向がみられ,本症における再発傾向に合致する.
|