研究概要 |
中心性漿液性網脈絡膜症における脈絡膜循環障害の本態が脈絡膜静脈閉塞であり,さらにこれが急性反応性蛋白で血栓傾向を亢進させるプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1の上昇によりもたらされるという仮説を検証する目的で,本症患者を3施設で集積し,フルオレセイン螢光造影検査およびインドシアニン螢光造影検査を行うとともに,ELISA法によるプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1(PAI1)値の測定を経時的に行った.インドシアニングリーン螢光造影検査所見では造影早期の脈絡膜血管拡張と後期相における脈絡膜の充血像がみられた.本症患者83例について経過中,1-5回のPAI1値が測定された.各症例の経過中での最高値の集計結果以下の如く.中央値:45,平均:73,標準偏差91,最小値:11,最大値:579ng/ml これらの結果は年齢マッチした12例の正常コントロールの7-84ng/ml,中央値:36ng/mlに比べて明らかに上昇していた. 正常上限を50ng/mlとしてこれを越えた症例数は40例で全症例の48%を占めた.これらの結果は,本症の急性期においては血漿中フラスミノーゲンアクチベータインヒビター1値は上昇しており,これは本症において血栓傾向にあることを窺わせる所見である.また同一症例の経過中にこの高PAI1値は数ヶ月〜1-2年の間維持される症例が観察されている.このことは本症の再発傾向の高さを考えると,再発要素として,高PAI1値が関与していることを疑わせる. インドシアニングリーン螢光造影検査で認められる脈絡膜血流うっ滞の事実と合わせ考え,本症が血栓形成による脈絡膜静脈閉塞により惹起されるとする我々の仮説を支持する.
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