酸化ストレスによって生じる網膜の過酸化反応に及ぼす背景について研究する目的で、最初に、遺伝性網膜変性をもつRCSラットと正常ラットの網膜色素上皮細胞におけるグルタチオンパーオキシダーゼ(GSH-PO)の局在を調べる研究を行った。免疫組織学的方法により、網膜視細胞外節の変性は視細胞内節のミトコンドリアに傷害を与え、その結果、GSH-POは内節から変性した外節へ移動することが分かった。 平成11年に計画した、網膜色素上皮細胞への蛍光灯による照射によるアルデヒドの形成に関する実験では、ウシの網膜色素上皮細胞の培養実験において、蛍光灯照射の与える影響をリノール酸(LA)またはリノール酸過酸化物(LHP)を添加した培養条件において調べた。蛍光灯照射は網膜色素上皮に活性酸素が関与する細胞傷害を与えることが分かった。 平成10年度と平成11年度に計画した鉄惹起性の網膜過酸化脂質の形成における蛍光物質(RPE)の生成とアルデヒドの形成を調べる実験においては、4-hydroxy-2-nonenal(HNE)、グルタチオン抱合体、をHPLC蛍光法などにより測定した結果、RFPの生成はアルブミンの存在下において著明に増加し、HNEはインキュベーション開始直後から増加し、その後、減少した。網膜グルタチオンはRFPの増加とともに減少したが、網膜ホモジェネートと標準HNEを反応させることにより、速やかにグルタチオン抱合体が形成されることを認めた。 これらの結果から、RFPの生成に過酸化脂質由来の不飽和アルデヒドが深く関与すること、過酸化反応が関与する多くの病変において毒性の非常に高いアルデヒド、特に、HNEが介在して組織傷害を増強させることが示唆された。さらにグルタチオンが過酸化反応から生じるアルデヒドの抑制をすることなど、重要な知見が得られた。
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