研究概要 |
多局所網膜電図(multifocal ERG)は黄斑部の網膜の反応を記録することができる。これにより、黄斑部病変の分析に用いることが可能である。糖尿病網膜症の中でも視力低下をきたす原因としては黄斑症が多く、その分析をmultifocal ERGで行った。multifocal ERGの発生起源を知るため、家兎における薬物実験を行い、multifocal ERGの一次核は網膜の比較的外層(双極細胞など)から発生し、二次核は内層から発生することが分かった(Horiguchi et al IOVS,1998)。網膜症のない10年以上罹病歴をもつ糖尿病患者からmultifocal ERGを記録したところ、一次核、二次核ともに潜時は延長し、、振幅は二次核のみに低下がみられた。また二次核は黄斑部のなかでも中心窩耳側にもっとも変化が著しかった。このことから、糖尿病網膜症の極めて初期には黄斑部耳側の網膜内層に何らかの変化が起きることが分かった。また、この部位は糖尿病網膜症(血管症)の後発部位ではないため、これは網膜内neuropathyである可能性も考えられた。このような内層の変化はphotostress testでも捉えられることが分かっており(Horiguchi et al Br J Ophthalmol,1998)、糖尿病症例でのphotostress recovery timeの延長との関連が観察された。今回の研究でmultifocal ERGを用いたphotostress recovery testが可能となり、糖尿病患者への応用を行っている。
|