研究概要 |
1.角膜変性症の分子遺伝学 (1)ケラトエピセリン関連角膜変性症 大阪大学医学部附属病院を受診し,遺伝子解析の承諾を得た角膜変性症患者92家系の原因遺伝子解析を行った。ケラトエピセリンの124番目のアミノ酸のアルギニンがヒスチジンに変異する。(R124H)アベリノ型が最多で62家系,格子状角膜変性症I型(R124C)と格子状角膜変性症II型(P501T)が10家系ずつ存在した。その他R555Wの変異を持つ顆粒状角膜変性症が6家系,非定型的な格子状角膜変性症(L527R),ライスビュックラーズ角膜変性症(R555Q,R124L)が1家系ずつ発見した(Cornea,2000 in press)。このうち,124番目のアルギニンがロイシンに変異した症例は,1919年に報告されたオリジナルタイプのライス・ビュックラーズ角膜変性症の原因遺伝子であることが判明した。 (2)膠様滴状角膜変性症 膠様滴状角膜変性症は,日本人特有の最も重篤な角膜変性症である。我々は,この変性症の原因遺伝子座が第一染色体短腕に存在することを発見し(Am J Hum Genet 1998),その後,原因遺伝子がM1S1であることを,つきとめた(Nature Genetics 1999)。初期病変の確定診断や将来の遺伝子治療に有用であると考えられた。 2.遺伝性網膜疾患の原因遺伝子検索 (1)X連鎖性若年性網膜分離症 X連鎖性若年性網膜分離症は,車軸状の黄斑分離や周辺部の網膜剥離をおこす遺伝性網膜ジストロフィで,若年より視力低下を来す疾患である。8家系の患者の原因遺伝子解析をおこない,すべての家系で,XLRS1遺伝子上に原因遺伝子変異を同定した(Archives of Ophthalmology,2000)。 (2)網膜色素変性症については,約100家系の染色体DNAを抽出し,解析中である。
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