研究概要 |
斜視の原因を分子生物学的に解明するために、本人、ならびに患者の家族の同意を得た上で、乳児内斜視の外眼筋の組織に特異的に発現するcDNAを分離し遺伝子を検索する研究を行った。まず乳児内斜視、および間欠性外斜視の症例を対象に、斜視手術の際に得られた外眼筋を凍結破砕し、筋からmRNAを抽出した(Invitrogen,Fast Track 2.0)。ついでmRNAからcDNAを合成し、乳児内斜視のcDNAに2種類のアダプターをつけ間欠性外斜視のcDNAとハイブリダイズさせた後、アダプターに相補的なプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を2回行い、乳児内斜視に存在するcDNAを増幅した(CLONTECH,PCR-Select)。PCR産物をゲル上で電気泳動したところ100〜500塩基対に広がるスメアが得られた。そのうち150塩基対の部位に明らかなバンドが認められた。このPCR産物を(pCRII-TOPO)に挿入し、形質転換を行い(Invitrogen,TOPO TA Cloninb)、Plasmid Mini preparation(Qiagen)を用いてプラスミドDNAを抽出し計240個のクローンを単離した。PCR産物(cDNA)を解析するために、乳児内斜視および間欠性外斜視の外眼筋から抽出したmRNAをナイロンメンブレン(Amersham,Hybond-N+)にドットブロット用96穴吸引装置(BIORAD)を用いてスポットし、アルカリフォスファターゼをラベリングしたcDNAをプローブとしてハイブリダイズさせ、高感度基質CDP-starで乳児内斜視の外眼筋に特異的に発現するクローンを検出した(Amersham,Gene images)。単離した10個のクローンの塩基配列を蛍光自動シークエンサー(Perkin Elmer,ABI Prism 310)を用いて決定し、データーベース(BLAST)でホモロジーを検索した。単離したクローンは158から414塩基対でこのうち414塩基対のクローンはホモロジーのない未知の遺伝子であった。
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