研究概要 |
平成10年度の研究目的は、zaprinastを用いて房水流出率を向上させる方法を見いだすことであった。 zaprinastは私たちの基礎的研究からスクリーニングされた薬物で,申請者が初めて眼科研究に応用した.zaprinastはcAMPを変化させずcGMPを上昇させるphosphodiesterase(PDE)5型アイソエンザイムの阻害薬で,成分はいわゆるバイアグラ(Sildenafil,Pfizer)と同じである. 我々はウシ眼に著明な房水流出率の改善をもたらすことを発見した.バイアグラ(Sildenafil,Pfizer)も点眼では家兎の眼圧を下降させたが,zaprinastの方がなお一層強力な効果を摘出ウシ眼で示した(下記). 実施計画の変更点: 1) zaprinast(10^<-7>から10^<-5>)はpilocarpineと異なり縮瞳を惹起しなかった.摘出ウシ瞳孔括約筋は,高濃度のzaprinastでも収縮しなかったので,将来臨床応用される可能性もある. 2) サーボ眼潅流装置を新規に作製し,2秒間隔で任意の時刻の房水流出量と房水流出率を測定するという応用性の高い方法を考えていたが,モーター制御が上手く行かず,まだ開発出来ていない.この方法は完成できないかもしれない. その場合はzaprinastとsildenafilの効果を詳細に比較することを考えたい. 平成10年度の成果: 1) 眼の潅流実験と毛様体筋の電気生理および培養細胞の研究を併せおこなった. 2) 房水流出率を向上させる方法を見いだすため,一定圧で眼内に潅流液を送り込み、房水流出率をin vitroで調べた。 3) その結果: zaprinastとsildenafil(バイアグラ)のウシ肉眼筋への反応はトーヌスの高いときは弛緩した.zaprinastは房水流出率と細胞骨格を変化させた。すなわち0.3mMではzaprinastは2時間以内に,sildenafilは5時間で培養隅角内皮細胞を収縮させた。灌流3時間で流出率(10,100,1000μM)は各々対照の、108.3±7.8,130.8±8.9,163.5±8.7%に改善した。なお,zaprinastはsildenafilより,房水流出率を強力に上昇させたので,平成11年度もzaprinastを主に,sildenafilを従として研究する予定である.
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